アストルティアの1種族、ドワーフ。
彼らは欲張りで、お宝好きの種族としても知られていますが、
研究熱心で勤勉な種族でもあります。
これはそんなドワーフの歴史に隠れた、1人の少女のお話。
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むかしむかーし、あるところに1人のドワーフの少女がいました。
たいていのドワーフと同じく、彼女もきれいなものが大好き。
でも、彼女が心奪われたのは宝石や貴金属でなく、お魚でした。 

魚の中にはとってもきれいな色、可憐な姿をしたものもいます。
彼女はそんな魚に夢中でした。

でも、仲間のドワーフは言いました。

いくら魚がきれいでも、この宝石にはかなわないさ。
赤や黄色じゃなくて、7色の魚でもいれば別だけどね。

それを聞いた彼女は、7色の魚を見つけに旅に出ることにしたのです。

どうすれば美しい7色の魚を見つけることができるだろう。
考えた彼女は、 
美といえばこの人、サロンフェリシアのオーナとしても有名な、
賢者ルシェンダを訪ねました。
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ルシェンダさま、7色の魚はどこに行けば見つかるのか教えて下さい。

それを聞いたルシェンダは悲しそうな顔で答えました。

残念だがアストルティアには7色の魚はいない。
でも、研究を重ねれば新しい品種を作ることも可能かもしれないよ?

それを聞いた彼女は、賢者ルシェンダに弟子入りしました。
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グランゼドーラ城の池に、赤、青、黄色のごくらくぎょ、
それにきんぎょやでめきんといった可憐な魚を集め、
彼女は毎日研究に励みました。

熱心な研究の成果もあり、
彼女は魚の色を混ぜ合わせる魔法の手がかりを見つけます。
でも、その魔法を行うには大量の魔力が必要。
そして、彼女の魔力はあまりにも少なすぎました。
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それでも、彼女はくじけません。
魔力の集まる土地を探して、旅に出ます。
そして古代遺跡の近く、リャナ荒涼地帯に絶好の実験場を見つけました。
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水もきれいで、魔力も豊富。
この土地ならきっと理想の7色の魚が作れるにちがいない。
彼女は日夜、寝食も忘れて実験に励みました。

でも、出来上がったのは色が混ざりすぎた黒いごくらくぎょと
反対に全ての色を消してしまった白いごくらくぎょばかり。
7色の魚を生み出すには、まだまだ魔力が不足していたのです。 

もっともっと、強い魔力のあるところ。
彼女の長い旅は続きました。
そしてついに彼女はその噂を聞きつけます。
創生の霊核という膨大なパワーの存在を・・・・

創生の霊核を求めた彼女は、
アストルティアから遠く離れたナドラガンド、
嵐の領界に隠されていることを突き止めます。

でも、長い研究と旅を続けてきた彼女にとって、
残された時間はあとわずか。彼女は年老いすぎていたのです。
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嵐の領界でもっとも魔力が強い場所。
そこに創生の霊格が隠されているに違いない。
そう思った彼女は翠嵐の聖塔に到着しました。

でも、そこで彼女は力尽きてしまいます。
私の命が消えようとも、どうか魔法が成功しますように!
彼女は命の灯火も魔力に変えて、
アストルティアから持ち込んだごくらくぎょに魔法をかけました。

ほとんどのごくらくぎょは、
これまでと同様、黒と白へと変化しました。

ああ、やっぱり無理だった。
そう思い、彼女が目を閉じかけたとき、
翠嵐の聖塔に大きな雷が落ちました。
そして雷の閃光が消えたとき、
今まで見たことのない美しい魚が姿を現したのです。
2
それは彼女が思い描いていた7色の魚ではありませんが、
見たこともない可憐で美しい姿をしていました。

翠嵐の聖塔前の川で華麗に泳ぐ、姿を見ながら、
彼女は満足そうに息を引き取りました。

そう、もうお気づきですね。

この魚は彼女の名前から、
ドワーフグラミーと名付けられました。

遠いナドラガンドで、
今もドワーフグラミーは冒険者の目をなごましてくれています。

強きいし カビむすドワのきせきかな 蛇足気味のうー川柳
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